思うところが色々とあったので、感想を書きます。
まず、この映画で何より素晴らしかった点は、加計呂麻島の自然の切り取り方が凄く美しいということです。
ソテツの実をアップに映したオープニングで、すでに私は少し胸躍らせました。笑
ソテツは奄美の文化に深く根差したものであり
またソテツの実とそれを覆っている花は、少しグロテスクで生々しく美しいです。
加計呂麻島を舞台にした恋愛映画にはピッタリだと思い、
良い映画が始まる予感がしました。
他にも、昼間の濃い緑と海の青のコントラスト、色とりどりの花々。
それに対比して夜のガジュマルの不気味さや、海の迫力。
どのシーンも素晴らしく美しかったです。
そして、映像とあわせて感動したのが、自然音の活かし方です。
鳥の声、虫の声、波の音。
聴覚を刺激されっぱなしの映画でした。
外部の人達が入ってきた事でビックリして鳴き止んだ鳥や虫たちが鳴き始めるのを待って、撮影を始めたと聞きました。
メインキャストを除いて、すべて島の人達をキャスティングしたということも含め、徹底して自然のままの奄美、その雰囲気の中で生まれた恋愛を描こうとしたのだと思いました。
この美しさだけで、この映画は十分に観る価値があるように思いました。
また、満島ひかりさんのナチュラルかつ体当たりの演技も素晴らしかったです。
島唄も、奄美の島唄独特の切なさと、もうすぐ死に行く人との刹那的な恋愛、満島さんの唄声、とてもマッチしていて胸に響きました。
そして満島さんの演技はとても素敵だったのですが、残念な点もありました。
まず、イントネーションというか訛りですね。
満島さんはおばあ様が奄美出身の方で、奄美にルーツを持つそうですが、やはり沖縄で育った方だと思うので、どうしても訛りが沖縄寄りになってしまっていました。
普通の映画なら、まあしょうがないよね。で済ませるところなのですが、
自然の奄美にこだわって、子ども達が地元の訛りで話しているだけに、満島さんのしゃべりが終始「浮いて」聞こえたんですよね。
これはもったいないと思います。
私は、この訛りは沖縄?それとも独自の訛り?と気になってしまい、最初からちょっと集中しづらかったです。
津嘉山正種さん同様、島言葉で話すシーン以外は、基本的には訛り無しにすべきだったのではないでしょうか。
「シマ」以外の人と恋に落ちる切なさを表現する主人公が、「シマ」以外の訛りで話すというのはちょっと酷いように思います。
奄美や沖縄の訛りを知らない人なら気にならない事だとは思うんですけどね。
それからもう1点、トエが算数の授業で黒板に書いた数字や記号が、いかにも平成の若者が書くものだったので、少しギョッとしました。
昭和初期の人は、あんなにギャルっぽい数字や記号を書きません。
これはどうして誰も気付かなかったんでしょうか。
ここも勿体ないな~と思いました。
なんだかクレームばばあみたいになってきましたね。スミマセン。
色々差し引いても、満島ひかりさんは素晴らしかったですよ。
他にあの役ができる人はいないように思います。
最後の方は、解釈が難しい映画でした。
ギンタおじとトエの父が話していたように、島(の神様)が、二人を守ったということなんだと思います。
トエは最後に朔に会いに行く前に、清めの水のようなものをかぶって「何か」を見ていましたよね。
そして笑っていました。
なので、二人のハッピーエンド(を思わせる何か)が見えたのかと思いましたが
その後の朔とのシーン、トエ自身自決する覚悟があったことを考えると、
あの時見た「何か」は何だったのか?
という疑問が残ります。
私はトエが笑っていたところから、朔にすがりつくシーンへの繋がりが読めず、どうしてもトエに感情移入できませんでした。
いや、死に行く恋人との別れを満島さんはものすごいエネルギーで表現していたんですけど、私自身は感情がついて行かず、ちょっとポカンとしていた感じです。
そこから最後までポカンとしたままエンディングを迎えたんですけど(;'∀')
とりあえず、最後、大坪さんが嬉しそうだったので、これでよし!みたいな気分になりましたけどね。笑
大坪さん、キャラがすごくよかったです。
作品にユーモアと癒しを与えていたというか。
トエ先生にロング・ロング・アゴウを歌ってもらっているシーンは、大坪さんの純粋さが伝わって、涙が出ました。
私がこの映画を通して最も戦争のろくでなさを感じたシーンでしたよ。
とりあえず、感じるところ、考えることが色々あった興味深い映画でした。
島尾ミホさんの小説「海辺の生と死」も読んでいなかったので、読みたいと思います。
そうするとまたこの感想も変わってくるかもしれません。
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